茨木工科高校ブログ

校長室だより 第69号を掲載しました

2015-03-08
校長室だより 第69号 ここに科学の力あり

■第9回卒業証書授与式 式辞(3月6日)■

 陽射しがすっかり明るくなり、春の息吹きを確かに感じさせる今日のよき日に、同窓会会長 小池隆彦様、学校協議会委員長 本津茂樹様、茨木市立西中学校校長 田中義明様をはじめ多数のご来賓並びに、保護者の皆様のご出席を賜り、ここに大阪府立茨木工科高等学校第九回卒業証書授与式を、盛大に行うことができますことを心より感謝申し上げます。

   卒業生のみなさん、卒業おめでとうございます。
 本日、ここに209名の皆さんが、本校の課程を修了し卒業する運びとなりました。
 光陰矢の如しと申します。入学してから早3年、在学中は、楽しいこと、良いことばかりでなく、つらかったこと、悩んだこともたくさんあったと思います。それらを乗り越えての卒業です。今、皆さんはいろいろなことが思い出されて、感無量の思いであろうと思います。
 今日は、勉強に部活動・資格取得等に一生懸命努力した人も、ほどほどに3年間を送った人も、また、途中で学校をやめたくなり思いとどまった人もめでたく3年間の課程を終えて卒業です。209人めいめいの学校生活への思いがあると思いますが、この茨木工科高校で共に笑い共に苦しみ成長してきた事実を忘れないでください。皆さんがこの3年間で成長したことを先生方や保護者の方々と一緒にお祝いしたいと思います。
 ご列席の保護者の皆様方、お子様を育て、今日まで、支えてこられ、晴れやかな旅立ちを前に、感慨もひとしおのことと拝察いたします。3年間なにかと気苦労が多かったと思いますが、本日このように立派に卒業されました。心からお慶び申し上げます。

 さて、皆さんの新たな門出にあたり、はなむけの言葉として、2つのことをお話したいと思います。
 校長として、本校で卒業式の式辞を述べるのは今年で3回目になります。
 1つ目の話は、過去2回の卒業式でもお話したことです。工業科の高校を卒業するする皆さんにどうしても伝えたいことですので、今年もお話しします。
 工業高校の卒業生として自信と誇り、そして自覚と使命感をもって、それぞれの道を歩んで欲しいということです。
 グローバル化の波の中、日本を取り巻くものづくり環境は厳しい状況にありますが、製品の高い品質とサービス、顧客のニーズに対する細やかな対応等、優位性、国際競争力はまだまだあります。その中にあって、工業高校は、依然として日本のものづくりを支え、発展させる人材を育成し、送り出していると信じています。
 英語訳の卒業証明書を申請される卒業生が毎年20名、多い年では30名近くおられます。国内はもとより世界中で茨木工業・工科高校の卒業生が活躍しています。
 皆さんは今日、茨木工科高校から巣立ち、就職、進学とそれぞれの道を歩むことになります。今後「ものづくり」の現場で仕事をする人もいれば、「ものづくり」の現場とは違ったところで働く人もいるでしょう。しかし、この茨木工科高校で3年間培った「ものづくり」の基本的な知識と技能は、とても重要な能力の一つであり、今後も必ず社会から必要とされ、大切にされていくものであると確信しています。工科高校の「工」は、「たくみ」とも読みます。高い志を持って、世界中で活躍する先輩に続いて欲しいと願っています。

 2つ目です。
 朝日新聞の平成26年1月10日付けの天声人語に、97歳で亡くなった詩人の杉山平一さんの「通過」という詩が紹介されています。
 「急行に乗って駅を通過するとき/ベンチに腰かけている人がチラリと見える/その人を私のように思う」 というたった3行の詩です。
 自分の人生は急行ではなく鈍行列車のようなものだという感慨でしょうか。この詩について、脚本家の山田太一さんは「ぼくは、各駅停車の駅にいる人が、豊かでかっこよく見える」と語り、プラスとされる価値でなくマイナスとみられることが実はしばしば「人間を潤している」と言っています。
 皆さんは、それぞれ進む道は違いますが、新しい世界へ向かって出発しようとしています。茨木工科高校を社会への始発駅にたとえるならば、皆さんはそれぞれの行き先に向かう列車に正に乗り込もうとしているところだと思います。乗り込む列車は、特急や急行という選択肢ばかりではないということです。
 楽な道を安易に選ぶのではなく、鈍行でいいからゆっくり、奇をてらうことなく、確実にそれぞれの道を歩んでもらいたいと思います。
 以上、2つのことをはなむけの言葉とします。

 終わりにあたり、本日、卒業生を祝し、ご列席いただきましたご来賓の皆様、保護者の皆様に重ねてお礼を申しあげますとともに、この3年間、本校の教育に多大なるご理解とご協力を賜りましたことを全教職員を代表し、あらためて厚くお礼申しあげます。ほんとうにありがとうございました。
 最後になりますが、卒業生の皆さん、健康に留意し、それぞれの道を、目標に向かって一歩ずつ、周囲とよい人間関係を築きながら前進してください。
 皆さんの前途が洋々たるものであることを信じ、幸多かれと祈って式辞といたします。

平成27年3月6日
大阪府立茨木工科高等学校
校長 辻井 安喜

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